ポーカーGTO戦略のまとめ

GTO+でポーカー戦略を考えるブログ。Twitter:@NENDERS_Poker

「vsタイトなコールレンジのBB」に対するCB戦略のアジャストについて

ところでジム通いを始めました。

運動した帰りにバカ食いする二郎系ラーメンがおいしいです。これは健康なのか?

 

●導入

さて、区切りが良かったので一段落していましたが、また新しいことを始めましょう。

前回までは、標準的なハンドレンジ間におけるBTNvsBBを前提とした集合分析を行ってきました。

 

フロップのボードストラクチャーに応じて、BTN側は、ALLハンドでの25%potCBだったり時に100%potCBだったり、それなりに特徴ある結果となりました。

hmpokergto.hateblo.jp

 

前回までの分析結果について、前提条件を今一度振り返ります。

 

具体的に設定されたハンドレンジは、以下のとおりでした(上記記事より抜粋)。

①BTN側のハンドレンジ

※PokerSnowie PreflopAdviserを参考に設定しています。

f:id:NENDERS:20180707000057p:plain

②BB側のハンドレンジ

※BTNと同様に、PreflopAdviserを参考に設定しました。(J4s、26sなど微妙なハンドを除いています。また、Axs、K6sなど薄い部分は、50%ウェイトに設定しています。)

f:id:NENDERS:20180707000205p:plain

 

前回記事にまとめたのは、BTNから私たちが①のハンドレンジに基づきオープンし、もし「相手が②のハンドレンジでのみコールする」と分かっている場合、フロップで私たちが採り得る疑似CB戦略です。

 

つまりは、標準的なBTNのオープンレンジvs標準的なBBのコールレンジでのCB戦略が前回までの記事でした。

おそらく、UnknownなBBに対するCB戦略は、それで十分だと思います。

 

 

ただ、私たちは、StarsではHUDやラベル、ライブでは観察等によるデータを使って、BB側の特徴を分析することができます。

こうしたBB側の特徴を加味したGTO戦略を分析すれば、特定の相手に応じて、さらに最適なCB戦略にアジャストできるかもしれません。

(ある意味、「標準」から外れた相手に対する搾取的なプレイングの考察ともいえそうです。)

 

 

ということで、今回からは「相手のプレイスタイルにアジャストしたCB戦略」をテーマとして分析してみます。

 

早速、一例としてハンドレンジを以下のように変更しました。

 

●「タイトなコールレンジのBB」に対するアジャストの傾向について

シチュエーションは前回と同様です。

 

100bb持ち

BTN:2.5bb open

SB:Fold

BB:Call

<Flop>

BB:Check

BTN:?? ⇒ GTO戦略(Bet(pot100%),Bet70%,Bet33%,Check

 

①BTN側のハンドレンジ

上記の設定と同様に、下図のとおり39.4%のハンドでオープンすることとします。

つまり、狭くもなく広くもなく、標準的なハンドレンジです。

f:id:NENDERS:20180707000057p:plain

 

②BB側のハンドレンジ

「BBがタイトである」ことを想定して、標準よりもタイトなコールレンジを設定しました。

 

BTNのオープンに対し、ディフェンスしていたレンジから、ボトムハンドの[T7s]や[86s]、[A2o]などを除きました。

また、3betを想定して除いていたレンジから、[KJs]、[QJs]を50%ウェイトで組み入れるなど、コールするハンドが全体的に強くなるよう調整しています。

 

左が前回までの標準BBレンジ右が今回のタイトなBBレンジ

(旧:34.5%)              (新:22.4%

f:id:NENDERS:20180707000205p:plain ⇒ f:id:NENDERS:20181105222041p:plain

 

こうして設定された「vsタイトなコールレンジのBB」に対し、前回までの分析で使ったものと全く同じ400のフロップをぶち込んでGTOを回してみます。

 

BTNのハンドレンジは同じ設定なので、前回までの「vs標準的なコールレンジのBB」分析と今回の「vsタイトなコールレンジのBB」分析について、それぞれのBTNのCB戦略の違いを見れば、何かわかるかもしれません。

わからないかもしれません。

 

ということで、PCを一晩置いて、GTOを回してみました。

 

左が「vs標準的なコールレンジのBB」、右が「vsタイトなコールレンジのBB」です。

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相変わらず小さくてよく見えないですね。一応、同じボードが順番に並んでいます。

 

果たして、「vs標準的なコールレンジのBB」「vsタイトなコールレンジのBB」では、BTNの最適戦略は異なるのでしょうか?

また、もしそれが異なるなら、ボードストラクチャーによる程度の違いはあるのでしょうか?

 

次回は、この2つの集合分析を見比べて考察してみます。

 

BTNvsBB(2BetPot)におけるボードストラクチャー別CB戦略のまとめ

これまでの記事の振り返りです。

各ボードストラクチャーの結論を抜粋しています。 

分析経緯・具体例等を確認したい場合は、下に添付した過去記事をご覧ください。

 

●分析条件

BTNvsBBのハンドレンジは、前回までと同様、以下のとおりです。

 

初期スタック:100bb

BTN:2.5bbオープン ⇒ BB:Call

<Flop>

BB:Check ⇒ BTN:??(Bet100%,Bet70%,Bet33%,CheckによるGTO戦略)

 ※ターン・リバーのBetサイズは75%potに固定

 

●BTN側のハンドレンジ

※PokerSnowie PreflopAdviserを参考に設定しています。

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●BB側のハンドレンジ

※BTNと同様に、PreflopAdviserを参考に設定しました。(J4s、26sなど微妙なハンドを除いています。また、Axs、K6sなど薄い部分は、50%ウェイトに設定しています。)

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●結論

 400のフロップを以下の①~⑥に分類し、BTNのGTO戦略を分析しました。

 

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例によって図は小さくなりがちです。

 

まず、フロップを「ペアボード」か「ペアボードでない」かに分類しています。

(全て同じ数の[6s6d6c]といったボードも存在し得ますが、今回の400のフロップではありませんでした。)

 

そして、前者のペアボードについては、ボードでペアを作った数字によって、

①ローorハイペア(2~4,T~A)

②ミドルペア(5~9)

の2つに分類しました。

 

また、後者のペアボードでないフロップについては、ボードのハイカードをもとに、

③「A」+「T以上」ハイ

④「A」+「9以下」ハイ

⑤「K」・「Q」ハイ

⑥「J以下」ハイ

に分類しました。

 

以下、過去の記事から、①~⑥におけるBTNのGTO戦略をまとめていきます。

 

●ペアボードのフロップ

①ローorハイペア(2~4,T~A)

例)[KcKh4d]、[5d2d2c]

ローペア(2~4)は、どちらにもヒットしている可能性が低いため、相対的にハンドレンジが強いBTN有利なボードである(BTN側には、BBには無い[AA],[KK]などハイポケットが存在する)。

また、ハイペア(T~A)は、オリジナルであるBTN側にヒットしているコンボが多く、有利なカードである。

⇒BTNは、全てのハンドで33%potのCBを打つことで、疑似GTO戦略を採る。 

 

②ミドルペア(5~9)

例)[As6s6h]、[8d8c6h]

ミドルペア(5~9)は、オリジナルのBTNよりも、コール側のBBにヒットしている可能性が高いカードである。

そのため、BTN側は①に比べ、保守的にショウダウンバリューを優先する。

⇒BTNは、トリップス以上のハンドを全て33%potのCBを打ち、それ以外のハンドの70%で33%potのCBを打ち、30%でCheckすることで、疑似GTO戦略を採る。

 

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●ペアボードでないフロップ

③「A」+「T以上」ハイ

例)[AsKs8h]、[AhTh8d]

「A」+「T以上」ハイボードにおいて、BB側のコールレンジは、セット・ツーペアといった強いメイドハンドが作りにくいため、多くがワンペアといったマージナルな強さのハンドである。

これに対し、BTN側は、ポラライズされた(強弱が両極端な)ハンドレンジで、中頻度かつ特大のCBを打つ。

⇒BTNは、「TPGK(AヒットTキッカー)以上のメイドハンド(ツーペア、セット等)」と「ガットショットストレートドローorバックドア2種orスモールポケット」のハンドにおいて、100%potのCBを打つ。

 

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④「A」+「9以下」ハイ

例)[As9h2c]、[Ac5c4d]

ボードには「A」が落ちており、引き続きBTN有利なボードではあるものの、BB側のハンドレンジには、トップ2ペアやセットといったメイドハンドを作るコンボが③よりも多い。

そのため、BTN側は、高いエクイティを活かしつつ、メイドハンドにペイオフしないように、小さく高頻度でCBを打つ。

⇒BTNは、[KK],[QQ]などのハイポケットや[KQ],[KJ]など強いKハイをCheckし、これらを除く殆どのレンジでpot33%のCBを打つことができる。

 

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⑤「K」・「Q」ハイ

例)[Kh5h9c]、[QsJs4h]、[KdTdJc]

「K」・「Q」ハイのボードにおいても、BTN側には高いエクイティがある。

こうしたボードにおけるCBは、ベットサイズの大小にさほど影響なく、BB側に

存在する「完全にミスしたハンド([A6o]や[75s]など)」を降ろすことができる。

⇒BTNは、全てのハンドで25%potのCBを打つことで、疑似GTO戦略を採る。

 

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⑥「J以下」ハイ

例)[JcTc8s]、[Jd4d8h]、[Ts4s5h]

「J以下」ハイのボードは、相対的にコール側であるBBのハンドレンジにヒットしていることが多い。

BTN側は、ボードストラクチャーに応じ、「オーバーペア・TPTK」といったハンドがValueを打てるかによって、CBの頻度・サイズを変える必要がある。

⇒BTNは、Checkを含めた全アクションにおいて、平均80%程度potのCBを打つことができる(中頻度特大CB)。ただし…

①ストレート条件(フロップストレートが作れるコンボがある)…影響力大

②コネクタ条件(ボードにコネクタがある)…影響力小

③モノトーン条件(ボードがモノトーンである)…影響力小

に該当する場合は、CB頻度・Betサイズともに低くする必要がある。

 

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以上が、これまでのBTNvsBBにおけるボードストラクチャー別CB戦略をまとめたものになります。

  

もちろん、ここでのGTO戦略とは、あくまで先に示したハンドレンジ間における最適戦略の一例であり、一概に「BTNvsBBにおける正解」ではありません。

ただ、特定のハンドレンジ間における最適戦略の解を知ることは、GTOが示す最適戦略の特徴を知るうえで、一つの参考になると思います。

 

 

ところで、BTNvsBBの特徴は、BTNはポジションの有意性を活かしてオープンし、BBは比較的緩いオープンのBTNに対して広くディフェンスすることから、お互いが広いハンドレンジを保っていることでした。

 

次回以降は、よりBBのハンドレンジを緩くor狭くした場合や、ハンドレンジをUTGvsBBに変えた場合では、この記事で定型化されたCB戦略がどのように変化するのか、検証してみようと思います。

 

③「J」以下のハイボードにおけるCBについて(完)

前回までのあらすじ:

J以下のハイボードをサンプルに重回帰分析をしたところ、こんな表になりました。

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「J」以下のハイボードでは、全アクション平均でpot82.01%のCBを打つことができる。

ただし…

①フロップでストレートが作れるコンボがある場合、平均CB額は▲24.66%低下する。

②ボードにコネクタがある場合、平均CB額は▲10.11%低下する。

③モノトーンボードである場合、平均CB額は▲8.91%低下する。

 (以下、①~③をそれぞれ①ストレート条件、②コネクタ条件、③モノトーン条件と呼んでいます。)

 

●導入

「J」以下のハイボードについて、分析結果は上記のとおりです。

 

前回の記事は、ケース[JdTc7h]について検証し、①ストレート条件および②コネクタ条件が該当するボードでは、BTNのCB額・CB頻度がともに低下することを考察しました。

 

今回の記事は、これら①~③の条件が該当しないボードを検証し、果たして、本当にBTNが(得意気に)ポットオーバーのCBが打てるかを確かめます。

 

長かった「J」以下のハイボード達との戦争も、これで終わりです。

 

●ケース[Jh9s6d]

[Jh9s6d]のボードは、先の①~③の条件はどれも該当しません。

そのため、冒頭の重回帰分析によれば、BTNはpotに対し、CBを大きい額かつ高頻度で打つことができるはずです。

 

この命題を確かめるために、GTOによるBTNの最適戦略を見てみます。

BTNvsBB 2betpot(pot5.5)BB:Check⇒BTN:?

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f:id:NENDERS:20181002222347p:plain

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<BTNの最適戦略>

平均CB額(Check含む):pot74.2%

内訳:(Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)=(27.4%,13.4%,12.1%,47.1%

 

---

(参考:前回記事[JdTc7h]でのBTNの最適戦略)

平均CB額(Check含む):pot27.3%

内訳:(Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)=(1.3%,9.8%,20.5%,68.3%

 ---

 

<考察>

前回記事のBTNから一転し、CB率が大きく上昇したことに加え、Betアクションの中で最も高い頻度のCB額が100%potBetになりました。

 

一見すると、[Jh9s6d]というボードは、BTNのハンドよりもコール側のBBにヒットしてそうなテクスチャです。

にも関わらず、BTNはCBをでっかくたくさん打つマンになってしまいました。

 

では、前回記事の[JdTc7h]と比べて、何が劇的に変化したのでしょう?

大きな違いは、「BTNのTPTK・オーバーペアがValueBetを打てるかどうか」です。

 

[JdTc7h][Jh9s6d]の比較

BTNのハンドレンジにおける最適戦略を、前回記事と比較してみました。

下図の左側が前回記事の[JdTc7h]、右側が今回の[Jh9s6d]です。

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(アクション色別:Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check

 両図において、BTNがTPTK・オーバーペアを持った時の戦略を赤枠で囲っています。

 

左図[JdTc7h]において、赤枠内のBTNの最適戦略は、おおよそpot33%orCheckの混合戦略です。一方で、右図においては、赤枠内のBTNの最適戦略は、大部分をpot100%が占めていることがわかります。

 

これらのボードの違いは、先の①~③条件に照らした「BB側が持ち得るハンドの強さ」にあるようです。

 

左記の[JdTc7h]のボードは、①ストレート条件および②コネクタ条件が該当するため、BTNは、前回記事のとおり簡単にCBを打つことができません。

①ストレート条件による[89]のストレートコンボに加え、②コネクタ条件による[JT]のフロップ2ペアがBBのハンドレンジに存在するからです。

 

 

一方で、右記の[Jh9s6d]のボードでは、①~③の条件は該当しません。

つまり、①ストレート条件および③モノトーン条件が該当しない「J」以下のハイボードにおいて、フロップでのナッツハンドは、セットを作る[JJ]、次に[99]です

これらのコンボは、プリフロップで3BetをしなかったBBのハンドレンジには存在しないため、BTN側のハンドレンジしかありません。

また、②コネクタ条件が該当しないということは、BB側に多く存在する[JT,T9]といったコネクタハンドがフロップ2ペアを作れないことを意味しています。よって、BB側には相対的にフロップ1ペアといったマージナルなハンドが増え、その分BTNのTPTK・オーバーペアが強くValueを打てることになります。

 

この結果として、①~③条件に該当しない[Jh9s6d]では、BTNがCBをバコーンとでっかくたくさん打つ戦略を採るようです。

 

●終わりに

 

以上が、「J」以下のハイボードにおける分析になります。

 

「J」以下のハイボードは複雑なため、一概に疑似戦略は採れませんが、BTNの時に①ストレート条件②コネクタ条件③モノトーン条件を気にしていただければ、きっと最適なCB額が身につくはずです。

 

 

さて、先般の記事で400あったフロップのボードも、ペアボードから始まり「A」+(「K」~「T」)ハイボード、「A」+(「9」以下)ハイボード、「K」・「Q」ハイボード…と、一通り分析を終えたことになりました。

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後日、一つの記事にこれまで結果をまとめ、それでBTNvsBBの2Betpotはおしまいです。

②「J」以下のハイボードにおけるCBについて

全然関係ないですけど、当ブログが下記で紹介されていました。ありがとうございました。

面白いし何よりめちゃめちゃ読みやすい。ぶろぐは奥が深いなあ。すごいなあ。

www.pokerjaws.com

また、Twitterでレスポンスくれる方々も励みになります、毎度ありがとうございます。連日ポーカー界隈も盛り上がっているようで、楽しく見ています。

 

 

さて、前回記事の重回帰分析によって、「J」以下のハイボードでは、「ストレートのコンボがあるか」や「コネクタがあるか」といったテクスチャによって、CB率とBetサイズが変化することがわかりました。

 

●分析結果

早速ですが、前回記事の分析結果を表にしました。

f:id:NENDERS:20180922204944p:plain

補足として、上図では、Checkアクションを含むBTNの平均CB額をpot比で表しています(前回記事の①5.500potに対してBTNがBetする加重平均値(Check含む)をpot比に換算しました。)。

 

「J」以下のハイボードでの平均的なCB率は、およそ50~70%である(下図)です。

デフォルトの平均Bet額82.01%(対pot比)とは、残り30%~50%のCheckを含めた全アクションでの平均で導出された数値なので、CB額そのもので考えれば、pot100%を超えることも十分ありえるといえそうです。

ついに、したり顔でポットオーバーを打てるボードが見つかりそうです。やったー!

 

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ただし、前回記事のとおり、重要なのは、先の図のうちデフォルトの下のボードの要素(赤背景)です。

 

「J」以下のハイボードでは、BTNの平均CB額は、いわゆる「減点方式」ような形で表せるようです。

要するに、重回帰分析による結果のうち有意なものを選別してまとめると、以下のようになります。

 

「J」以下のハイボードでは、全アクション平均でpot82.01%のCBを打つことができる。

ただし…

①フロップでストレートが作れるコンボがある場合、平均CB額は▲24.66%低下する。

②ボードにコネクタがある場合、平均CB額は▲10.11%低下する。

③モノトーンボードである場合、平均CB額は▲8.91%低下する。

 

以上が分析結果による結論です。

なんだかわかったような、わかんないようなですね。

 

ということで、具体例で見るのが一番です。 

キーワードは、「BTNのTPTK・オーバーペアがValueBetを打てるかどうか」です。

 

●ケース[JdTc7h]

 [JdTc7h]のボードは、先の条件のうち、①ストレート条件(89がストレートを作るコンボ)と②コネクタ条件(ボードのJTがコネクタ)を満たしています。

先の分析によれば、①~③の条件に該当するボードでは、BTNの平均CB額が下がり、Checkの比率も上がるはずです。

どうなるか見てみましょう。

 

GTOによるBTNの最適戦略は、下図のようになります。

BTNvsBB 2betpot(pot5.5)BB:Check⇒BTN:?

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<BTNの最適戦略>

平均CB額(Check含む):pot27.3%

内訳:(Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)=(1.3%,9.8%,20.5%,68.3%

 

<考察>

めちゃくちゃCheckします。

トップヒットしたTPTK(AJ)やオーバーペア(AA,KK)も含め、広くCheckしています。なぜでしょう?

 

どうやらこの原因は、既にBBのハンドレンジに数多くのメイドハンドが含まれていることにあるようです。

 

そもそも、BTNvsBBの2betpotにおける[JdTc7h]のボードにおいて、オリジナルのBTNがハンドレンジに持つTPTK(AJ)やオーバーペア(AA,KK,QQ)は、どれくらい強いのでしょうか?

 先の①と②の条件に照らして、考察してみます。

①ストレート条件

[JdTc7h]において、最も強いハンドは、[89]のストレートです。このメイドハンドに対して、TPTK・オーバーペアは、既に殆どエクイティがありません。

加えて、オリジナルであるBTNだけが持ち得たフロップセット(JJ,TT)でさえ、ストレートに対しては、既にアンダードッグになっています。

こうした「そこそこ強かった系」ハンドでCBを打ち、BBからレイズが返ってきて困った経験は、おそらくポーカープレイヤーなら誰しも経験するはずです。

そのため、BTNにはこうしたTPTK・オーバーペアを含む幅広いハンドでショーダウンバリューを優先し、Checkアクションが増えます。

 

⇒こういった背景から、条件①(ストレート条件)が該当するボードでは、BTNの平均CB額が大きく低下します。

 

②コネクタ条件

[JdTc7h]のボードで注意すべきは、ストレートのコンボだけではありません。

BTNvsBBのハンドレンジをみると、オリジナルであるBTNがプレミアハンドを持つ反面、BBのハンドレンジには、相対的にコネクタハンド(QJ,JT,T9など)が増えています。

そして、今回の[JdTc7h]のボードでは、BBに[JT]という強力なツーペアがレンジに含まれています。

そのため、BTNのTPTK(AJ)やオーバーペア(AA,KK,QQ)は、ツーペアのコンボに対し、既にエクイティで逆転されているため、楽観的にCBを打つことができません。

よって、①と同様に、BTNにはCheckアクションが増えます。

 

⇒こういった背景から、条件②(コネクタ条件)が該当するボードでは、BTNの平均CB額が低下します。

 

●結論

キーワードに照らしていえば、先のケースでは、①ストレート条件と②コネクタ条件により、BTNは「TPTK・オーバーペアでValueBetを打つことが難しい」といえます。

よって、 [JdTc7h]におけるBTNのアクションには、Checkアクションが増え、CB額も小さくなる結果となりました。

 

この具体例からいえることとして、冒頭の「J」以下のハイボードにおける①~③(ストレート、コネクタ、モノトーン)の条件とは、BTNが持ち得たTPTK・オーバーペアといった「そこそこ強かった系」ハンドに対し、BBが逆転したコンボをどれだけ持っているかを示しているといえます。

 

つまり、フロップのボードテクスチャがこの①~③の条件に該当するほど、BBには、BTNのTPTK・オーバーペア等を逆転したコンボが多く含まれているといえます。

こうしてBTNが打ちにくくなるボードの見分け方を簡易化したものが、先の①~③の条件です。

 

では、①~③の条件に該当しない「J」以下のハイボードであれば、きっとBTNは大きくバコーンと打てるはずです。そちらの具体例も見てみましょう。

 

ただ、ちょっと長くなってしまいました。

続きは次回です。

①「J」以下のハイボードにおけるCBについて

前回までのあらすじ:

BTNvsBBのフロップ400をカテゴリー別に分類しました。

・ペアボード

・「A」+「K」~「T」のハイボード

・「A」+「9」以下のハイボード

・「K」・「Q」ハイボード

まで終わって、残るは「J」以下のハイボードです。

f:id:NENDERS:20180730194254p:plain

 

●導入

いよいよ最後の章です。

 

ちなみに、これまでの色んなボードテクスチャの分析結果は、「J」以下が終わり次第、いずれ一つの記事に詰め込む予定です。

 

ところで、「J」以下のハイボードが摩訶不思議な結果になっているのは、前回の記事の苦悶のとおりです。

hmpokergto.hateblo.jp

 

そのため、こちらも従来のように簡潔な分析結果で済ませるのは諦めました。

以降は、「J」以下のハイボード達との戦争です。

 (結論・考察は次回なので、今回は読み飛ばしても構いません。)

 

●前提

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「J」以下のハイボード(131個)について、重回帰分析を行います。

 

説明変数は、ボードテクスチャにおける以下の5つの要素としました(1~4はダミー変数を用いています。)。

  1. モノトーンボードか否か
  2. Flopでストレートが作れるか([JT7]や[J97]は可、[J86]は不可など)
  3. ボードにコネクタ(連続した数字)があるか
  4. ドライボードか(ボードにWギャッパーが2つ存在するものと定義([J74]など))
  5. ボードの3枚を全て足したSUM値

 

被説明変数は、GTOによる(100%potBet,70%,33%,Check)の最適戦略から計算された、以下の2つとしました。

  1. BTNのアクションで5.500のPotにBetする加重平均値(Check含む)
  2. BTNがCBする場合の平均Betサイズ(Check除く)

 

つまり、フロップのボードテクスチャを赤の5つの要素に分解し、それぞれが青の「BTNのアクションで平均どれくらいpotに金を投げ入れるか」および「CBを打つと決めた場合の平均的なBetサイズ」にどういった影響をもたらすのを調べます。

 

●結果

①5.500potに対してBTNがBetする加重平均値(Check含む)

5つの要素による影響を調べたところ、以下の表を出してくれました。

最近のGoogle スプレッドシートはすごいですね。

 

f:id:NENDERS:20180911232225p:plain

以上の結果を、影響力が高い順番に並び替えて整理します。

また、あまりに統計的に有意でないものは省いています。

 

<①結果>

BTNの全アクション(Check含む)における平均Bet額は、デフォルトではpot5.500に対して4.500のCB(約80%)を打つ。

しかし…

  1. Flopでストレートが作れるコンビネーションがある場合、▲1.356(約30%)少なくなる
  2. ボードにコネクタがある場合、▲555(約10%)少なくなる
  3. モノトーンの場合、▲490(約10%)少なくなる
 例えば、「Flopでストレートが作れる+ボードにコネクタがある」ボード([JT7]や[T87]など)では、2つの影響によって、デフォルトの80%から、▲30%と▲10%の影響が合わさり、40%程度の平均Bet額となります(Check含む)。

 

 

続いて、BTNがCBを打つと決めた場合のBet額に対する影響力を調べます。

②BTNがCBする場合の平均Betサイズ(Check除く)

f:id:NENDERS:20180911233608p:plain

 

 <②結果>

●BTNがCBを打つと決めた場合、最適戦略による平均CB額は53%potである。

しかし…

  1. モノトーンボードの場合、平均CB額は▲12%小さくなる
  2. Flopでストレートが作れるコンビネーションがある場合、▲7%小さくなる
  3. ドライボードの場合、▲7%小さくなる
  4. ボードSUM値が大きくなるほど、Bet額は大きくなる(SUM値が10大きくなると+6%程度)

 

ひとまず、以上が重回帰分析の結果になります。

 

これらの分析から、例えば、Flopでストレートが作れるコンビネーションがある場合には、BTNのCB率は大きく下がり、加えて平均CB額が下がることがわかります。

一方で、ボードSUM値(フロップボードの数を足した合計)は、CB率そのものには有意な影響を与えないものの、SUM値の大小によって、平均CB額が増減していることがわかります。

 

つまり、ボードテクスチャの要素によって、CB頻度を下げる影響やCB額を小さくする影響は様々であるといえます。

 

なんか、もうポーカーのブログとは思えないですね。

このへんの分析結果をまとめた結論と考察は、次回へ続きます。

 

(「J」以下のハイボード分析・進捗)

難しい。ので、途中経過だけです。

(´・ω・`)

 

いよいよ、最後の「J」以下のハイボードを分析しています。

(下図の400のフロップボードのうち131)

f:id:NENDERS:20180730194254p:plain

 

ただ、この分析がなかなか一筋縄ではいかなさそうです。

というのも、例えば、BTNvsBBの2bet potにおいて、GTOの最適戦略はこんな感じ。

 

[Jh8c4d]…BTNはPotOverCBを推奨します!でっかく打ちましょう!

②[Jc7h6c]…BTNはPot33%CBCheckを強く推奨します!PotOverなんてもってのほか!

 

BTNのエクイティは、①より②の方が高い。

にもかかわらず、でっかく打つのは①。そして、EV値も①の方が高い。

こんな混合戦略がごちゃ混ぜになっています。
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これまでの「X」ハイボードでは、たいてい似通ったBetサイズを採択する傾向にありました(「A」+「K~T」「A」+「9以下」による大きな違いはありましたが。)。

そのため、GTO戦略を体系化した「疑似GTO戦略」を策定することができました。

 

ただ、この「J」以下のハイボードにおいては、従来のペアボードや「A」~「Q」ハイボードとは、根本から異なる法則で最適戦略が分布しているように思えます。

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でも、「ぽっとおーばーべっと」をしたり顔で打てるプレイヤーになりたいです。

単純な疑似GTO戦略の策定は難しそうですが、「J」以下のハイボードにおけるBTNvsBBで起こっていることだけでも、言語化できたら嬉しいですね。

②「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略について(完)

前回までのあらすじ:

BTNvsBBにおける「K」・「Q」ハイボードでは、 Bet額を25%potに固定し、全てのハンドでCBを打つことで、疑似GTO戦略を採ることができる。

 

この補足として、まずドライな「K」・「Q」ハイボードでは、BTNのALL25%potCB戦略に対し、思いのほかBBがレイズ出来ないため、有効であることがわかりました。

では、ウェットな「K」・「Q」ハイボードでも、ALL25%potCBは通用するのでしょうか?

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 ●ウェットな「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略

 

そもそも、フィル・ゴードンの教科書から成る一般論として、ボードがウェットになるにつれて、ベット額は高くすべき」があります。

そのため、正直なところ、個人的には、ウェットなボードにおける25%potCBは、どうも違和感があります。

(彼の赤本の「コンティニュエーションベット」項目では、

「ドライなボードの時には、私はポットの2分の1ぐらいを打つ。

ダンプな(ややウェットな)ボードでは、私は3分の2を打つ。

ウェットなボードでは、だいたい4分の3ぐらいを打つ。

モンスーン(非常にウェットな)ボードでは、ポットサイズを打つ。」

とあります。

 

そこで、ウェットな「K」・「Q」ハイボードでのレンジvsレンジを見てみましょう。

 

ということで、その辺に転がっていたウェットな[Js9sQh]ボードを持ってきました。

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 このボードをめぐるBTNvsBBの2Betpot争いを見てみます。

 

●最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)におけるレンジvsレンジ

・ BB(Check)⇒BTN(??)

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[Js9sQh]におけるBTNのCBハンドレンジを分析しました。(EV期待値3.448

 

ドライボード編と比べ、依然として33%potBet43.4%を占めるものの、Checkの比率が46.0%と格段に高くなり、また、70%potBet10.2%と高くなりました。

 

(ちなみに、ドライボード編では、33%potBet90.5%でした。)

hmpokergto.hateblo.jp

 

この最適戦略下において、BTNが33%potBetを打った場合、BBの対抗レンジは以下のようになりました。

●最適戦略による33%potCB⇒BBレンジ

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一見すると、BB側のハンドレンジには、[Js9sQh]のボードにおいて、OESDを作る「T」を含むハンドやAxs,Kxsによるフラッシュドローなど、レイズしたくなるハンドが多いように思えます。

しかし、BB側のハンドが絡むのと同じように、CBを打つBTN側のハンドレンジにも、OESDやAxs,Kxsによるフラッシュドロー、さらに「QQ」「JJ」「99」などのセットや「KT」「T8」といったフロップストレートまで含まれていることから、33%potCBに対するBB側のレイズ比率は9.86%と高いとはいえないようです。

 

では、同じ[Js9sQh]のボードにおいて、BTNが全てのハンドレンジで25%potのCBを打った場合を見てみます。

 

●BTNが全てのハンドで25%potCBを打つ場合のレンジvsレンジ

 

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(EV期待値3.430(最適戦略から▲0.018

例によって、BTNは全てのハンドで25%potのCBを打つ機械になりました。

自分のハンドが強かろうが、ボードがウェットだろうが、関係ありません。

ただ、それでもEV_LOSS▲0.018に収まっているようです。(許容範囲▲0.055

 

このALL25%potCB戦略に対し、BBの対抗戦略は以下のようになりました。

 

ALL25%potCB⇒BBレンジ

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①BTNが100%のハンドでCBを打っていること(最適戦略時は53.6%)

②CBサイズが33%pot25%potに小さくなったこと

を踏まえ、BB側のレイズ比率は20.1%と高くなりました。

ALL25%potCBマシーンによる、恵まれたハンドレンジから放たれたクソみたいな少額CBは、そこそこの反撃を受けているようです

 

しかし一方で、注目すべきは、このウェットなボードにおけるALL25%potCB戦略は、BBが持つハンドのうち、多くの「A」ハイやローコネクタといった29.9%のレンジを降ろすことができる点です。

(ドライなボードにおけるALL25%potCB戦略では、BBのFold比率は19.8%でした。)

 

このように、ドライなボードとウェットなボードにおける25%potCBは、どちらも同じCB額ではあるものの、ウェットなボードになるほど、BB側がFoldするレンジが多くなっていることがわかります。

BTNは自分のカードも見ずに25%potCBを打っているだけですが、ボードストラクチャーの影響によって、ウェットになるほど、相手が勝手に降りやすくなっているようです。なんかお得ですね。

 

●まとめ

ここまで、ウェットなボードにおけるレンジvsレンジを見てみました。

 

また、冒頭の命題として、「ボードがウェットになるにつれて、ベット額は高くすべき」がありましたが、これを検証すべく、[Js9sQh]においてBTNが採るCB戦略毎のEV値を調べました。

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①最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)

②CB額を77%potに固定し、GTOによる Bet or Check

ALL25%potCB戦略

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最適戦略からのEV乖離値(EV_LOSS)を調べたところ、興味深いことに、上図のとおり②と③の戦略は殆どEV値が変わらないことがわかります。

つまり、[Js9SQh]のボードについて、77%potのCB額を握って最善の Bet or Check を選択したとしても、ALL25%potCBを打つ場合と、期待値は殆ど変わりません。

 

よって、BTNvsBBのように広いハンドレンジがぶつかる場合、[Js9SQh]のようにウェットなボードにおいても、CBは大きく打つことが一概に良いとはいえないようです。

 

この結果を踏まえ、ALL25%potCB戦略がもたらす効果をまとめてみました。

 

77%potCBによって降ろせるBBのハンドレンジと25%potCBによって降ろせるハンドレンジには、そもそも共通している部分が多い。

⇒BTNvsBBにおいて、BB側のミスしたハンド(弱い「A」ハイやローコネクタ)は、77%potCBを打たずとも、25%potCBで十分に降ろすことができます。

 

・BTNが有利なボードストラクチャー下において、ALL25%potCBであっても、BBのレイズできるハンドレンジは既に狭い。また、BBにレイズされた場合でも、BTNには十分に戦えるハンドレンジが含まれている。

⇒「K」・「Q」ハイのBTN有利なボードにおいて、BBが持ち得る最高のハンド(セットやフロップストレート等)は、BTNのハンドレンジにも必ず含まれています。逆に、オーバーペア(AA,KK)やトップセット(KK,QQ)は、BTNだけが持ち得るハンドです。

 

25%potCBと安く打つことで、BBの弱いハンドからもバリューが獲れる。

⇒BTNvsBBの広いレンジだからこそ、BBにはボトムペアや22,33といったスモールポケットが含まれており、安く打つことによって得られるバリューターゲットも多いです。

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以上で、「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略の補足は終わりです。

結論として、「K」・「Q」ハイボードにおけるBTNのALL25%potCB戦略は、ボードストラクチャーに応じてBBの対抗戦略が変化するため、ボードがドライorウェットでも、疑似GTO戦略といえる程度の一定のEVが期待できるといえます。

 

 (要するに、先日の記事によるCB体系化の結論に行きつきます。)

hmpokergto.hateblo.jp

 

どうでもいいですけど、アミューズカジノなんかのライブで25%potCBなんて打ってると安すぎて失笑されそうですね。もし打つときは意味深な感じを出しましょう。

 

次回以降は、「J」以下のハイボードを考察します。

一応、「J」以下のハイボードを分析すると、ペアボードから始まった400のボード分析も一通り網羅したことになります。もう少しです。