③ペアボードにおけるCBの体系化について(完)
前回までのあらすじ:
BTNvsBBの2bet potにおいて、32種類のペアボードは以下の2つに分類できました。
①ローorハイカードのペア(2~4、T~A)
②ミドルカードのペア(5~9)
このうち①については、33%Betを100%打つ戦略によって「疑似GTO戦略」を満たすことができます。一方、②については、EV値が乖離値範囲外だったため、別途戦略を策定しなければなりません。
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●ミドルカードのペアボードにおける戦略の策定について
前回までの結論に引き続き、ペアボードにおける「ミドルカードのペア(5~9)」について、戦略を策定します。
ミドルカードのペアボードにおいて、33%Betを100%打つ戦略の代わりに、簡単なルールで代替が出来るような、色々な戦略を試行錯誤し、より最適EVとの乖離が少ない方法を探します。
ということで、戦略を手当たり次第に試してみました。
戦略1.全てのハンドにおいて、50%ずつの確率で33%BetとCheckをする。
→失敗。エクイティが高いのにCheck比率が多すぎるため、EV値が低い。
戦略2.全てのハンドにおいて、70%の確率で33%Betし、30%Checkをする。
→失敗。平均的なEV値は戦略1.と比べて向上したものの、バリューハンドにおけるBet不足がみられる。
戦略3.オーバーペア(KK,AA等)以上のハンドを全て33%Betし、残りのハンドにおいて、70%の確率で33%Betし、30%Checkする。
→失敗。平均値はさらに向上したが、相手のトリップスに対してオーバーペアがペイオフしてしまう。
戦略4.トリップス以上のハンドを全て33%Betし、残りのハンドにおいて、70%の確率で33%Betし、30%Checkする。
→乖離値は許容範囲に収まったので採用。
・下図は、「ミドルカードのペア(5~9)」における戦略1.~4.の試行錯誤の軌跡です。左上、右上、左下、右下の順に戦略1.~戦略4.です。(左から2列目がEV値。3、4列目が各アクションの比率。)
結論として、以下の戦略になりました。
・ミドルカード(5~9)によるペアボードに対しては、トリップス以上のハンドを全て33%Betし、残りのハンドにおいて、70%の確率で33%Betし、30%Checkする。
この戦略によって、計算されたEV値は以下のとおりになりました。
前回記事②で触れたEV値の計算表に、ミドルカード(5~9)のペアボードに対して適用する戦略を追加しました。(右4列)
従来、「EV_LOSS」が55を超えていた下部のボードについて、上記の戦略を代替することにより、「EV_LOSS」が55以下に修正されていることがわかります。
●結論
ここまでの結論をまとめると、以下のチャートのとおりです。
文章にすると、以下の具合になります。
・BTNからオープンし、BBがコールしてヘッズアップになりました。
・フロップがペアボードとなった時、BBのチェックに対して、
①ローorハイカードのペア(2~4、T~A)であれば33%Betを100%打ちます。
②ミドルカードのペア(5~9)であれば、以下に分岐します。
②‘自分のハンドがトリップス以上なら、33%Betを100%打ちます。
②‘‘それ以外のハンドでは、70%の確率で33%Bet、30%の確率でCheckします。
改めて、具体的な場面をシミュレーションしてみましょう。
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あなたはBTNからオープンし、BBがコールしました。フロップではペアボードが開き、BBはセオリー通りCheck、アクションはあなたに回ってきました。
もし、ペアボードのペアがローorハイカード(2~4、T~A)であれば、あなたは自分のハンドを見る必要なく、33%Betが疑似GTO戦略になります。
しかし、ペアボードのペアがミドルカード(5~9)のとき、あなたは初めて自分のハンドを確認します。
約4~8%の確率で、あなたのハンドはトリップス以上(具体的には、トリップス・フルハウス・クアッズです。ペアボードにおいて、フロップストレートとフロップフラッシュは存在しません。)になっています。その時には、迷うことなく33%Betを100%うちます。
ただし、大抵の場合、そうそうトリップス以上にはなりません。その時、あなたが次に見るのは腕時計です。
腕時計の秒針が1~40であれば、33%Betです。(約70%)
腕時計の秒針が41~60であれば、Checkです。(約30%)
ライブポーカーにおいて、アクションを腕時計で決定する姿は、とても風情があって良いですね。これ見よがしに時計を覗き込んだ後、意味深に33%BetまたはCheckしましょう。
きっと、その一連のアクションだけで、それなりのリスペクトは得られるはずです。
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以上が、ペアボードにおけるCBの体系化になります。
あくまで前述で定義されたハンドレンジ間における疑似GTO戦略ですが、もし何かのご参考になれば幸いです。