ポーカーGTO戦略のまとめ

GTO+でポーカー戦略を考えるブログ。Twitter:@NENDERS_Poker

「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおけるCBについて

前回までのあらすじ:

BTNvsBBにおいて、「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボードにおけるCBは、CB額はポットベット(pot100%)に固定し、以下のハンドでBet(pot100%)orCheck戦略を採ることで、疑似GTO戦略となる。

●Bet100%レンジ

 1.Value

  ・TPGKより強いメイドハンド(ツーペア、セット等)

 2.Bluff:

  ・ガットショット

  ・バックドア2種

  ・ショーダウンバリューの無いポケットペア(4以下)など

●Checkレンジ

 ・TPWK(キッカーは「9」以下が目安)

 ・ミドルヒット、ボトムヒット

 ・ドロー系が全くない諦めハンド

 

hmpokergto.hateblo.jp

 

---

 

前回に引き続き、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードを調べてみます。

 

●現状

ちなみに、前回の「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボードから「やけにマニアックなボードばっかり分析してんだな」とか思われそうなタイトルですが、違うんです。

 

ランダムに抽出した400のフロップボードは、61のペアボードとそうでない339のハイカードボードに分かれます。(ちなみに、理論上は3枚同じ[3s3h3c]とかもありますが、今回のランダム抽出ではありませんでした。)

 

この後者のボードのうち、「A」ハイボード96あります。つまり、ランダムに開くボードの約25%程度は、「A」ハイボードといえます(下図赤枠)。

f:id:NENDERS:20180723232508p:plain

 

この96の「A」ハイボードは、さらに、

・53「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボード(下図青枠)

・43「A」ハイ+(「9」以下)ハイボード(下図赤枠)

に分類できました。

f:id:NENDERS:20180723234050p:plain

つまりは、一見すると、とってもマニアックに見える前回からの「A+なんとかハイボード」分析は、それぞれ単体で「J」ハイボードや「T」ハイボード等よりも頻出であり、インパクトの大きいトピックなのです。

簡潔にいうと、別に自分は「マニアックなボード分析おじさん」ではないということです。

 

この「A」ハイ+「X」ハイボードの分析が終われば、既に実施したペアボード分析と合わせて、400のうち157のボードを分析したことになり、フロップの約40%を考察したことになります。嬉しいですね。僕は嬉しいです。

 

●Bet額の策定について

 

ということで、「マニアックなボード分析おじさん」は今日もボードを分析します。

再掲にはなりますが、今回の分析対象は、以下の赤枠になります。

f:id:NENDERS:20180724010150p:plain

上図を見ると、それぞれ「A」ハイ+「X」ハイボードでの最適戦略((pot100%Bet,70%,33%,Check)の混合戦略)において、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボード(赤枠)は、前回までの「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボード(青枠)に比べ、明らかに最適Betサイズが低くなっていることがわかります。

(モノトーンボードでは、一貫して33%Betが最適とされているようです。)

 

そこで、まずは、CB額を固定した疑似GTO戦略を策定します。

 今回は、最適戦略において最も頻度が高かった33%Betに固定してみました。

 下図は、前回同様、最適戦略からのEV値の乖離列:EV_LOSS)を試算しています。

f:id:NENDERS:20180724202111p:plain

f:id:NENDERS:20180724202120p:plain

 結論として、EV_LOSSは▲10を最大とした乖離に収まり、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおける最適戦略は、Bet(pot33%)orCheck戦略によって代替できることがわかりました。

 

●A+「9」ハイボードでCBを打つレンジについて

以降は、具体的なボードを使ってアクションを調べてみます。

BTNvsBBのシチュエーションにおいて、[As9h2c]でのBet33%orCheck戦略のレンジを分析したところ、以下のようになりました。

 

f:id:NENDERS:20180724224738p:plain

①BTNのハンドレンジ総体でのBet33%orCheck

f:id:NENDERS:20180724203942p:plain

 ②BTNのハンドの役ごとにおけるBet33%orCheck

f:id:NENDERS:20180724204032p:plain

ぱっと見ると、とりあえずなんでもBetしている印象です。

 

上図をまとめると、CB額をBet33%に固定した場合、BTNのBet33%orCheckアクションには、以下のような特徴がありました。

 

Bet33%(61.8%)レンジ

1.Value

・セット(AA,99,22)・ツーペア(A9,A2) ※92はレンジにない

・トップヒット(A)・ミドルヒット(9)(キッカーが弱くなるにつれてCheckレンジが増える)

 

2.Bluff

・ボトムヒット(2)

・ガットショット(54,53,43)

バックドア2種(QT,QJ,JT

・その他、下記のCheckレンジを除く大抵のハンドには、Bet内訳がある様子

 

Check(38.2%)レンジ

・KK,QQなどのハイポケット

・KQ,KJなどのKハイ

 

どうやら、CB額をBet33%に固定した場合には、前回のBet100%比べ、かなり幅広く多様なハンドでBetしているようです

一方で、Checkアクションでは、KKQQといった、依然エクイティがあるハイポケットをCheckに回し、Turn以降のCheckレンジを補強しているようです。

また、ペアにならなかったKQKJなど強いKハイでは、Checkを推奨しているようです。

 

後者について、個人的に意外だったので、この強いKハイをCheckに回す理由を調べてみました。

 

●付録

・「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおいて、BTNのKQハイ・KJハイは、ブラフCBを打たずにCheckに回す。

 

一般に、ボードに「A」が落ちていれば、オリジナル有利のボードといわれます。

このとき、BTNは大抵のハンドでブラフCBが打てますが、どうやらKQハイ・KJハイでは、その大部分をCheckに回すことが多いようです。 (この特徴は、今回の[As9h2c]だけでなく、その他の「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードでも共通でした。)

 

では、BTNのKQハイ・KJハイは、なぜCheckに回すのでしょう?

 

この理由を調べるため、先程の[As9h2c]ボードにおいて、BTNの33%CBに対するBBの抵抗レンジを見てみます。

 

f:id:NENDERS:20180724213154p:plain

f:id:NENDERS:20180724213506p:plain

 

BTNのBet33%に対して、BBは、ワンペア以上の全てのハンドでCallし、ペアにならなかったハイカードの多くをFoldしています。

そして、このBBがFoldするレンジには、KxやQxなどのハイカード、また87oや65sなどのコネクターがあります。

 

つまり、BTNがKQやKJでブラフCBを打つ場合、本来、相手のハンドレンジで降ろしたかったKxやQx(上図ピンク枠)を、自分のハンドがブロックしてしまう状態といえます。

 

そのため、GTO戦略では、ブラフCBとして、44や33といったショーダウンバリューの薄いローポケット等をBet33%に回す代わりに、KQやKJといったハンドを諦めCheckに回しているようです。

(ちなみに、[As9h2c]のフロップにおいて、BTNの33とKQには同程度のエクイティ(43%程度)がありますが、最適アクションの内訳は正反対でした。)

 

●結論

ともあれ、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおいて、先程のボードを一般化した結論は、以下のとおりです。

 

●CB額はpot33%ベットに固定し、Bet33%orCheck戦略を採る。

Bet33%レンジ

 1.Value

  ・セット・ツーペア

  ・トップヒットおよびミドルヒット(キッカーが弱くなるにつれてCheckレンジが増える)

 2.Bluff:

  ・ボトムヒット

  ・ガットショット

  ・バックドア2種

  ・その他大抵のハンド(下記Checkレンジ以外ならBet可)

Checkレンジ

  ・KK,QQなどハイポケット

  ・KQ,KJなど強いKハイ

 

 

ブラフ成功率とブロッカーの関係はなんとなく知っていましたが、個人的には興味深いCheckレンジでした。

 

次回は、「K」ハイボードの分析をしようと思います。

ボード分析おじさんの夢は、ボード分析で食べていくことです。