「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおけるCBについて
前回までのあらすじ:
BTNvsBBにおいて、「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボードにおけるCBは、CB額はポットベット(pot100%)に固定し、以下のハンドでBet(pot100%)orCheck戦略を採ることで、疑似GTO戦略となる。
●Bet100%レンジ
1.Value:
・TPGKより強いメイドハンド(ツーペア、セット等)
2.Bluff:
・ガットショット
・バックドア2種
・ショーダウンバリューの無いポケットペア(4以下)など
●Checkレンジ
・TPWK(キッカーは「9」以下が目安)
・ミドルヒット、ボトムヒット
・ドロー系が全くない諦めハンド
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前回に引き続き、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードを調べてみます。
●現状
ちなみに、前回の「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボードから「やけにマニアックなボードばっかり分析してんだな」とか思われそうなタイトルですが、違うんです。
ランダムに抽出した400のフロップボードは、61のペアボードとそうでない339のハイカードボードに分かれます。(ちなみに、理論上は3枚同じ[3s3h3c]とかもありますが、今回のランダム抽出ではありませんでした。)
この後者のボードのうち、「A」ハイボードは96あります。つまり、ランダムに開くボードの約25%程度は、「A」ハイボードといえます(下図赤枠)。
この96の「A」ハイボードは、さらに、
・53の「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボード(下図青枠)
・43の「A」ハイ+(「9」以下)ハイボード(下図赤枠)
に分類できました。
つまりは、一見すると、とってもマニアックに見える前回からの「A+なんとかハイボード」分析は、それぞれ単体で「J」ハイボードや「T」ハイボード等よりも頻出であり、インパクトの大きいトピックなのです。
簡潔にいうと、別に自分は「マニアックなボード分析おじさん」ではないということです。
この「A」ハイ+「X」ハイボードの分析が終われば、既に実施したペアボード分析と合わせて、400のうち157のボードを分析したことになり、フロップの約40%を考察したことになります。嬉しいですね。僕は嬉しいです。
●Bet額の策定について
ということで、「マニアックなボード分析おじさん」は今日もボードを分析します。
再掲にはなりますが、今回の分析対象は、以下の赤枠になります。
上図を見ると、それぞれ「A」ハイ+「X」ハイボードでの最適戦略((pot100%Bet,70%,33%,Check)の混合戦略)において、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボード(赤枠)は、前回までの「A」ハイ+(「K」~「T」)ハイボード(青枠)に比べ、明らかに最適Betサイズが低くなっていることがわかります。
(モノトーンボードでは、一貫して33%Betが最適とされているようです。)
そこで、まずは、CB額を固定した疑似GTO戦略を策定します。
今回は、最適戦略において最も頻度が高かった33%Betに固定してみました。
下図は、前回同様、最適戦略からのEV値の乖離(右列:EV_LOSS)を試算しています。
結論として、EV_LOSSは▲10を最大とした乖離に収まり、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおける最適戦略は、Bet(pot33%)orCheck戦略によって代替できることがわかりました。
●A+「9」ハイボードでCBを打つレンジについて
以降は、具体的なボードを使ってアクションを調べてみます。
BTNvsBBのシチュエーションにおいて、[As9h2c]でのBet33%orCheck戦略のレンジを分析したところ、以下のようになりました。
①BTNのハンドレンジ総体でのBet33%orCheck
②BTNのハンドの役ごとにおけるBet33%orCheck
ぱっと見ると、とりあえずなんでもBetしている印象です。
上図をまとめると、CB額をBet33%に固定した場合、BTNのBet33%orCheckアクションには、以下のような特徴がありました。
●Bet33%(61.8%)レンジ
1.Value
・セット(AA,99,22)・ツーペア(A9,A2) ※92はレンジにない
・トップヒット(A)・ミドルヒット(9)(キッカーが弱くなるにつれてCheckレンジが増える)
2.Bluff
・ボトムヒット(2)
・ガットショット(54,53,43)
・その他、下記のCheckレンジを除く大抵のハンドには、Bet内訳がある様子
●Check(38.2%)レンジ
・KK,QQなどのハイポケット
・KQ,KJなどのKハイ
どうやら、CB額をBet33%に固定した場合には、前回のBet100%に比べ、かなり幅広く多様なハンドでBetしているようです。
一方で、Checkアクションでは、KKやQQといった、依然エクイティがあるハイポケットをCheckに回し、Turn以降のCheckレンジを補強しているようです。
また、ペアにならなかったKQやKJなど強いKハイでは、Checkを推奨しているようです。
後者について、個人的に意外だったので、この強いKハイをCheckに回す理由を調べてみました。
●付録
・「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおいて、BTNのKQハイ・KJハイは、ブラフCBを打たずにCheckに回す。
一般に、ボードに「A」が落ちていれば、オリジナル有利のボードといわれます。
このとき、BTNは大抵のハンドでブラフCBが打てますが、どうやらKQハイ・KJハイでは、その大部分をCheckに回すことが多いようです。 (この特徴は、今回の[As9h2c]だけでなく、その他の「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードでも共通でした。)
では、BTNのKQハイ・KJハイは、なぜCheckに回すのでしょう?
この理由を調べるため、先程の[As9h2c]ボードにおいて、BTNの33%CBに対するBBの抵抗レンジを見てみます。
BTNのBet33%に対して、BBは、ワンペア以上の全てのハンドでCallし、ペアにならなかったハイカードの多くをFoldしています。
そして、このBBがFoldするレンジには、KxやQxなどのハイカード、また87oや65sなどのコネクターがあります。
つまり、BTNがKQやKJでブラフCBを打つ場合、本来、相手のハンドレンジで降ろしたかったKxやQx(上図ピンク枠)を、自分のハンドがブロックしてしまう状態といえます。
そのため、GTO戦略では、ブラフCBとして、44や33といったショーダウンバリューの薄いローポケット等をBet33%に回す代わりに、KQやKJといったハンドを諦めCheckに回しているようです。
(ちなみに、[As9h2c]のフロップにおいて、BTNの33とKQには同程度のエクイティ(43%程度)がありますが、最適アクションの内訳は正反対でした。)
●結論
ともあれ、「A」ハイ+(「9」以下)ハイボードにおいて、先程のボードを一般化した結論は、以下のとおりです。
●CB額はpot33%ベットに固定し、Bet33%orCheck戦略を採る。
●Bet33%レンジ
1.Value:
・セット・ツーペア
・トップヒットおよびミドルヒット(キッカーが弱くなるにつれてCheckレンジが増える)
2.Bluff:
・ボトムヒット
・ガットショット
・バックドア2種
・その他大抵のハンド(下記Checkレンジ以外ならBet可)
●Checkレンジ
・KK,QQなどハイポケット
・KQ,KJなど強いKハイ
ブラフ成功率とブロッカーの関係はなんとなく知っていましたが、個人的には興味深いCheckレンジでした。
次回は、「K」ハイボードの分析をしようと思います。
ボード分析おじさんの夢は、ボード分析で食べていくことです。