②「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略について(完)
前回までのあらすじ:
BTNvsBBにおける「K」・「Q」ハイボードでは、 Bet額を25%potに固定し、全てのハンドでCBを打つことで、疑似GTO戦略を採ることができる。
この補足として、まずドライな「K」・「Q」ハイボードでは、BTNのALL25%potCB戦略に対し、思いのほかBBがレイズ出来ないため、有効であることがわかりました。
では、ウェットな「K」・「Q」ハイボードでも、ALL25%potCBは通用するのでしょうか?
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●ウェットな「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略
そもそも、フィル・ゴードンの教科書から成る一般論として、「ボードがウェットになるにつれて、ベット額は高くすべき」があります。
そのため、正直なところ、個人的には、ウェットなボードにおける25%potCBは、どうも違和感があります。
(彼の赤本の「コンティニュエーションベット」項目では、
「ドライなボードの時には、私はポットの2分の1ぐらいを打つ。
ダンプな(ややウェットな)ボードでは、私は3分の2を打つ。
ウェットなボードでは、だいたい4分の3ぐらいを打つ。
モンスーン(非常にウェットな)ボードでは、ポットサイズを打つ。」
とあります。
そこで、ウェットな「K」・「Q」ハイボードでのレンジvsレンジを見てみましょう。
ということで、その辺に転がっていたウェットな[Js9sQh]ボードを持ってきました。
このボードをめぐるBTNvsBBの2Betpot争いを見てみます。
●最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)におけるレンジvsレンジ
・ BB(Check)⇒BTN(??)
[Js9sQh]におけるBTNのCBハンドレンジを分析しました。(EV期待値3.448)
ドライボード編と比べ、依然として33%potBetが43.4%を占めるものの、Checkの比率が46.0%と格段に高くなり、また、70%potBetも10.2%と高くなりました。
(ちなみに、ドライボード編では、33%potBetが90.5%でした。)
この最適戦略下において、BTNが33%potBetを打った場合、BBの対抗レンジは以下のようになりました。
●最適戦略による33%potCB⇒BBレンジ
一見すると、BB側のハンドレンジには、[Js9sQh]のボードにおいて、OESDを作る「T」を含むハンドやAxs,Kxsによるフラッシュドローなど、レイズしたくなるハンドが多いように思えます。
しかし、BB側のハンドが絡むのと同じように、CBを打つBTN側のハンドレンジにも、OESDやAxs,Kxsによるフラッシュドロー、さらに「QQ」「JJ」「99」などのセットや「KT」「T8」といったフロップストレートまで含まれていることから、33%potCBに対するBB側のレイズ比率は9.86%と高いとはいえないようです。
では、同じ[Js9sQh]のボードにおいて、BTNが全てのハンドレンジで25%potのCBを打った場合を見てみます。
●BTNが全てのハンドで25%potCBを打つ場合のレンジvsレンジ
(EV期待値3.430(最適戦略から▲0.018))
例によって、BTNは全てのハンドで25%potのCBを打つ機械になりました。
自分のハンドが強かろうが、ボードがウェットだろうが、関係ありません。
ただ、それでもEV_LOSSは▲0.018に収まっているようです。(許容範囲▲0.055
)
このALL25%potCB戦略に対し、BBの対抗戦略は以下のようになりました。
●ALL25%potCB⇒BBレンジ
①BTNが100%のハンドでCBを打っていること(最適戦略時は53.6%)
②CBサイズが33%pot⇒25%potに小さくなったこと
を踏まえ、BB側のレイズ比率は20.1%と高くなりました。
ALL25%potCBマシーンによる、恵まれたハンドレンジから放たれたクソみたいな少額CBは、そこそこの反撃を受けているようです。
しかし一方で、注目すべきは、このウェットなボードにおけるALL25%potCB戦略は、BBが持つハンドのうち、多くの「A」ハイやローコネクタといった29.9%のレンジを降ろすことができる点です。
(ドライなボードにおけるALL25%potCB戦略では、BBのFold比率は19.8%でした。)
このように、ドライなボードとウェットなボードにおける25%potCBは、どちらも同じCB額ではあるものの、ウェットなボードになるほど、BB側がFoldするレンジが多くなっていることがわかります。
BTNは自分のカードも見ずに25%potCBを打っているだけですが、ボードストラクチャーの影響によって、ウェットになるほど、相手が勝手に降りやすくなっているようです。なんかお得ですね。
●まとめ
ここまで、ウェットなボードにおけるレンジvsレンジを見てみました。
また、冒頭の命題として、「ボードがウェットになるにつれて、ベット額は高くすべき」がありましたが、これを検証すべく、[Js9sQh]においてBTNが採るCB戦略毎のEV値を調べました。
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①最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)
②CB額を77%potに固定し、GTOによる Bet or Check
③ALL25%potCB戦略
↓
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最適戦略からのEV乖離値(EV_LOSS)を調べたところ、興味深いことに、上図のとおり②と③の戦略は殆どEV値が変わらないことがわかります。
つまり、[Js9SQh]のボードについて、77%potのCB額を握って最善の Bet or Check を選択したとしても、ALL25%potCBを打つ場合と、期待値は殆ど変わりません。
よって、BTNvsBBのように広いハンドレンジがぶつかる場合、[Js9SQh]のようにウェットなボードにおいても、CBは大きく打つことが一概に良いとはいえないようです。
この結果を踏まえ、ALL25%potCB戦略がもたらす効果をまとめてみました。
・77%potCBによって降ろせるBBのハンドレンジと25%potCBによって降ろせるハンドレンジには、そもそも共通している部分が多い。
⇒BTNvsBBにおいて、BB側のミスしたハンド(弱い「A」ハイやローコネクタ)は、77%potCBを打たずとも、25%potCBで十分に降ろすことができます。
・BTNが有利なボードストラクチャー下において、ALL25%potCBであっても、BBのレイズできるハンドレンジは既に狭い。また、BBにレイズされた場合でも、BTNには十分に戦えるハンドレンジが含まれている。
⇒「K」・「Q」ハイのBTN有利なボードにおいて、BBが持ち得る最高のハンド(セットやフロップストレート等)は、BTNのハンドレンジにも必ず含まれています。逆に、オーバーペア(AA,KK)やトップセット(KK,QQ)は、BTNだけが持ち得るハンドです。
・25%potCBと安く打つことで、BBの弱いハンドからもバリューが獲れる。
⇒BTNvsBBの広いレンジだからこそ、BBにはボトムペアや22,33といったスモールポケットが含まれており、安く打つことによって得られるバリューターゲットも多いです。
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以上で、「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略の補足は終わりです。
結論として、「K」・「Q」ハイボードにおけるBTNのALL25%potCB戦略は、ボードストラクチャーに応じてBBの対抗戦略が変化するため、ボードがドライorウェットでも、疑似GTO戦略といえる程度の一定のEVが期待できるといえます。
(要するに、先日の記事によるCB体系化の結論に行きつきます。)
どうでもいいですけど、アミューズカジノなんかのライブで25%potのCBなんて打ってると安すぎて失笑されそうですね。もし打つときは意味深な感じを出しましょう。
次回以降は、「J」以下のハイボードを考察します。
一応、「J」以下のハイボードを分析すると、ペアボードから始まった400のボード分析も一通り網羅したことになります。もう少しです。