③「J」以下のハイボードにおけるCBについて(完)
前回までのあらすじ:
J以下のハイボードをサンプルに重回帰分析をしたところ、こんな表になりました。
「J」以下のハイボードでは、全アクション平均でpot82.01%のCBを打つことができる。
ただし…
①フロップでストレートが作れるコンボがある場合、平均CB額は▲24.66%低下する。
②ボードにコネクタがある場合、平均CB額は▲10.11%低下する。
③モノトーンボードである場合、平均CB額は▲8.91%低下する。
(以下、①~③をそれぞれ①ストレート条件、②コネクタ条件、③モノトーン条件と呼んでいます。)
●導入
「J」以下のハイボードについて、分析結果は上記のとおりです。
前回の記事は、ケース[JdTc7h]について検証し、①ストレート条件および②コネクタ条件が該当するボードでは、BTNのCB額・CB頻度がともに低下することを考察しました。
今回の記事は、これら①~③の条件が該当しないボードを検証し、果たして、本当にBTNが(得意気に)ポットオーバーのCBが打てるかを確かめます。
長かった「J」以下のハイボード達との戦争も、これで終わりです。
●ケース[Jh9s6d]
[Jh9s6d]のボードは、先の①~③の条件はどれも該当しません。
そのため、冒頭の重回帰分析によれば、BTNはpotに対し、CBを大きい額かつ高頻度で打つことができるはずです。
この命題を確かめるために、GTOによるBTNの最適戦略を見てみます。
BTNvsBB 2betpot(pot5.5)BB:Check⇒BTN:?
<BTNの最適戦略>
平均CB額(Check含む):pot74.2%
内訳:(Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)=(27.4%,13.4%,12.1%,47.1%)
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(参考:前回記事[JdTc7h]でのBTNの最適戦略)
平均CB額(Check含む):pot27.3%
内訳:(Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)=(1.3%,9.8%,20.5%,68.3%)
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<考察>
前回記事のBTNから一転し、CB率が大きく上昇したことに加え、Betアクションの中で最も高い頻度のCB額が100%potBetになりました。
一見すると、[Jh9s6d]というボードは、BTNのハンドよりもコール側のBBにヒットしてそうなテクスチャです。
にも関わらず、BTNはCBをでっかくたくさん打つマンになってしまいました。
では、前回記事の[JdTc7h]と比べて、何が劇的に変化したのでしょう?
大きな違いは、「BTNのTPTK・オーバーペアがValueBetを打てるかどうか」です。
●[JdTc7h]と[Jh9s6d]の比較
BTNのハンドレンジにおける最適戦略を、前回記事と比較してみました。
下図の左側が前回記事の[JdTc7h]、右側が今回の[Jh9s6d]です。
(アクション色別:Bet(pot100%),pot70%,pot33%,Check)
両図において、BTNがTPTK・オーバーペアを持った時の戦略を赤枠で囲っています。
左図[JdTc7h]において、赤枠内のBTNの最適戦略は、おおよそpot33%orCheckの混合戦略です。一方で、右図においては、赤枠内のBTNの最適戦略は、大部分をpot100%が占めていることがわかります。
これらのボードの違いは、先の①~③条件に照らした「BB側が持ち得るハンドの強さ」にあるようです。
左記の[JdTc7h]のボードは、①ストレート条件および②コネクタ条件が該当するため、BTNは、前回記事のとおり簡単にCBを打つことができません。
①ストレート条件による[89]のストレートコンボに加え、②コネクタ条件による[JT]のフロップ2ペアがBBのハンドレンジに存在するからです。
一方で、右記の[Jh9s6d]のボードでは、①~③の条件は該当しません。
つまり、①ストレート条件および③モノトーン条件が該当しない「J」以下のハイボードにおいて、フロップでのナッツハンドは、セットを作る[JJ]、次に[99]です。
これらのコンボは、プリフロップで3BetをしなかったBBのハンドレンジには存在しないため、BTN側のハンドレンジしかありません。
また、②コネクタ条件が該当しないということは、BB側に多く存在する[JT,T9]といったコネクタハンドがフロップ2ペアを作れないことを意味しています。よって、BB側には相対的にフロップ1ペアといったマージナルなハンドが増え、その分BTNのTPTK・オーバーペアが強くValueを打てることになります。
この結果として、①~③条件に該当しない[Jh9s6d]では、BTNがCBをバコーンとでっかくたくさん打つ戦略を採るようです。
●終わりに
以上が、「J」以下のハイボードにおける分析になります。
「J」以下のハイボードは複雑なため、一概に疑似戦略は採れませんが、BTNの時に①ストレート条件②コネクタ条件③モノトーン条件を気にしていただければ、きっと最適なCB額が身につくはずです。
さて、先般の記事で400あったフロップのボードも、ペアボードから始まり「A」+(「K」~「T」)ハイボード、「A」+(「9」以下)ハイボード、「K」・「Q」ハイボード…と、一通り分析を終えたことになりました。
後日、一つの記事にこれまで結果をまとめ、それでBTNvsBBの2Betpotはおしまいです。