ポーカーGTO戦略のまとめ

GTO+でポーカー戦略を考えるブログ。Twitter:@NENDERS_Poker

「K」・「Q」ハイボードにおけるALL25%potCB戦略について

前回までのあらすじ:

BTNvsBBにおける「K」・「Q」ハイボードでは、 Bet額を25%potに固定し、全てのハンドでCBを打つことで、疑似GTO戦略を採ることができる。

でも、そもそも25%potのCBってなあに?

スターズで設定してるBetスライダーは33%potが最小なんだけど?

 

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前回記事より、112の「K」・「Q」ハイボードでは、全てのハンドによる25%potのCBによって、疑似的にGTO戦略を採れることがわかりました。

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しかし、確かに最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)と比較して▲10.19EV_LOSS※の範囲に収まった結果とはなりましたが、そもそもド安い25%potBetは、レンジvsレンジにどういった効果をもたらしているのでしょう?

(※ここでいうEV_LOSSの数値は、5,500のpotに対して、BTNで最適戦略を採った場合から▲10.19の期待値損失を意味しています。つまり、5.50$potに対し、最適なGTO戦略を採った場合から、平均で0.01$の損失になります。)

 

25%potBetの謎を解明するため、具体的なボードを例に見てみます。

なお、BTN,BBのハンドレンジとシチュエーションは、前回までと同様にしています。

 

ということで、その辺に転がっていた、ドライそうな[Kd8c2s]のボードを持ってきました。可愛らしいですね。

 

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●最適戦略(pot100%Bet,70%,33%,Check)におけるレンジvsレンジ

 

●BTNレンジ

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[Kd8c2s]のボードにおいて、BTNの戦略を分析したところ、なんか真っ青(pot33%Bet)になってしまいました。

なんと、最適戦略でさえ、ハンドレンジの90.5%33%CBを打っています。

 

このBTNの脳筋33%CBに対して、BBの対抗戦略は以下のようになりました。

 

●BBレンジ

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BTNの33%CBに対し、あらゆるワンペアはもちろん、A7oやQJoなど、強いハイカードまで広くCallに回しているようです。

また、BTNはかなり幅広くCBを打っていますが、このCBに対して、BBがレイズに回したハンドレンジは13.9%と、意外と少ないことがわかります。

つまり、[Kd8c2s]のボードにおいて、BBがバリューでレイズできるハンドは限られているようです。

 

では、同じボードにおいて、BTNが全てのハンドレンジで25%potのCBを打った場合を見てみます。

 

●BTNが全てのハンドで25%CBを打つ場合のレンジvsレンジ

 

●BTNレンジ

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なんて単純明快なハンドレンジなんでしょう。

BTNは、手元に存在し得る全てのハンドで25%potのCBを打つ機械になりました。

 

このCBに対して、BBの対抗戦略は以下のようになりました。

(BBは、BTNのALL25%potCB戦略をわかっているものとして、これに対してRaise,Call,Foldで最適な戦略を採ります。言い換えれば、BBは、BTNが「自分のカードを見ずにとりあえず25%potCBを打つ」姿を見ています。)

 

●BBレンジ

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BTNのCBサイズが33%から25%とさらに安くなったこともあり、先程よりFoldの比率が減り、代わりにCallの比率が増えているようです。

ただ、BTNが全てのハンドでCBを打っていることが分かったとしても、BBがレイズできるハンドは限定的であることがわかります。

(一見、BBはトップヒット(K)位あればバリューでRaiseしても良いんじゃないかと思われますが、BTNのレンジには、キッカー負けした同じトップヒット(AK,KQ)はもちろん、さらにはオーバーペア(AA)、セット(KK、88、22)まで含まれていることから、BBがワンペアでバリューのRaiseを返すことはほぼ無いようです。)

 

上記の結果をもとに、これら2つ戦略におけるレンジvsレンジをまとめてみました。

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BTNが最適戦略の代替としてALL25%potCB戦略を採った場合でも、2つの戦略間のEV差は、▲0.01(pot5.50)に収まっています。

また、BTNの戦略を変化させたとき、BBの対抗戦略は、Raiseの比率は変わらず、Call率が高くなり、代わりにFold率は低くなりました。

 

●まとめ

 

[Kd8c2s]のドライボードにおいて、BTNがALL25%potCB戦略を採った場合、最適戦略と比べてもEV差は▲0.01に収まっており、疑似GTO戦略として採用できそうです。

 

また、今回のハンドレンジの分析から、その理由として、以下のことが挙げられます。

 

・そもそもBTNの最適戦略では、33%potCBを90%近い高頻度で打っており、25%potCBを100%のハンドレンジで打つ戦略に代替しても、得られるEVは大差ない。

 

・「K」・「Q」ハイボードにおいて、BB側のハンドレンジには、バリューのRaiseを返せるコンボが少ない(単なる「K」や「Q」のトップヒットでは、BTNのTPTKやover pair、setに対してペイオフしてしまうため、レイズを返せない。)。

 

・BTNは、フロップのCBを安く高頻度で打つことで、お互いに広いハンドレンジを残しつつ、IPの有利な状態でターン・リバーのストリートに進むことができる。

 

以上、「K」・「Q」ハイボードをめぐり、BTNvsBBで起こっているpot争いの一幕を見ることができました。

ちなみに、ここから先は未検証の推論ですが、仮にフロップをALL25%potCB戦略を採った場合、ターンやリバーでのバレルについては、70%potを超える大きいBetサイズが推奨されるように思われます。

(フロップの安いCBでハンドレンジを広く残した分、BBにはweak pairやA-high等弱いハンドが多く残っているためです。)

このターン以降のバレル額の大小について、BTNのEV値の影響も分析してみたいですね。

 

次回は、「K」・「Q」ハイのウェットボードも見てみようかと予定しています。

その先は、ぼちぼちフィル・ゴードンも難色を示していた「J」・「T」ハイボードに取り掛からないとなあと思っています。