「vsBB(Loose)」な状況下におけるBTNのエクイティ変化について
前回はGTO論で脱線しましたが、そういえば、その前までは「vsBB(Tight)」の分析をしました。
全体平均で見ると、BTNは、少額の33%potCB頻度を減少させ、Check比率と70%potの中額のCB頻度を高めることで、タイトなBBのコールハンドにアジャストします。
また、ボードストラクチャーについては、「T」以上のハイボードとペアボードにおけるCB比率を減少させる一方、「9」以下のハイボードではCB比率を増加させることがわかっています。
この結果が、レンジが狭い「vsBB(Tight)」に対するアジャストの方法でした。
では、「vsBB(Loose)」ではどうなるのでしょう?
「1回だけ!」とか言いながらいつでもプリフロでコールしてくるような、憎らしくルースなBBをどうにかしてやりたいのです。
●導入
まず、前回までの「vsBB(Tight)」なレンジは、以下のように設定していました。
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①BTN側のハンドレンジ
標準的なレンジである39.4%のハンドで2.5bbオープンします。
②BB側のハンドレンジ
(左が前回までの標準BBレンジ、右がタイトなBBレンジ)
(旧:34.5%) (新:22.4%)▲12.1%※
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今回は、「①BTN側のハンドレンジ」はそのまま変えず、「②BB側のハンドレンジ」を標準よりもルースにします。
ルースなBBを想定したハンドレンジは、以下のとおりです。
②BB側のハンドレンジ
(旧:34.5%) (新:46.4%)+11.9%
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BBの標準的なコールレンジ(34.5%)に、わずかな強いレンジと多くの弱いレンジを加え、ルースなコールレンジ(46.4%)を構成しました。
具体的には、BBは、わずかに強いハンド([ATs(50%ウェイト)]、[KJs(50%ウェイト)])を加えるとともに、弱いAx,Kx,Qx、また[K6o]や[T7o(50%ウェイト)]といった多くのオフスーツを組み入れています。
(比較のため、「標準⇒タイト」と「標準⇒ルース」のレンジ差分は、同じ12.0%程度になるよう設定しました。)
●「vsBB(Loose)」におけるエクイティ変化について
フロップは前回までと同じ400に設定しました。
「①vsBB」「②vsBB(Tight)」「③vsBB(Loose)」の3つに分類し、エクイティ分布およびBTNのCB戦略を表にしました。
今回は、赤枠を引いた「①vsBB」と「③vsBB(Loose)」におけるエクイティの変化を分析します。
(ところで、GTO+v1.1.5のアップデートによって、ボードが自動で並び替え・昇降順ソートができるようになりました。今まで数式でボードを並び替えていたんですが、こいつはなかなか便利です。)
ちなみに、 前回の「①vsBB」と「②vsBB(Tight)」において、BTNのエクイティは、ボードのストラクチャーによって異なる変化がありました。
前回記事と同様、「ペアボード」と「ペアボード以外」に分類した後、ハイカードによってボードを振り分けます。
下記が「vsBB(Loose)」における平均エクイティ(赤枠)と、標準的なBBとのエクイティ差分(青枠)になります。
うーんなんか緑っぽさは濃くなっているようですが、ぱっと見てもよくわかんないですね。
そこで、面白いと思ったポイントを抜粋します。
(上と下は同じ図です。ささやかな初の試みですが、分かりやすいようにラクガキしてみました。)
①平均エクイティ(総体)について
400のフロップにおけるBTNの平均エクイティは、
「①vsBB」では54.20%
「②vsBB(Tight)」では51.31%
「③vsBB(Loose)」では55.66%
となりました。
一見、 BBのコールレンジの広い狭いによって、順当にBTNのエクイティは変化しているように見えます。
ただ、その差分に注目すると、「②-①」は▲2.89%、「③-①」は+1.45%と、エクイティ変化には、約2倍ほどの感応度があることがわかります。
この差分の違いを言い換えれば、
「BBが標準⇒タイトにした場合(②-①)に、BTNのエクイティは2.89%低下する。
しかし、BBが標準⇒ルースにした場合(③-①)には、BTNのエクイティは1.45%しか上昇しない。」
となります。
先の前提によれば、「標準⇒タイト(②-①)」と「標準⇒ルース(③-①)」は、どちらも標準的レンジ±12.0%程度にしています。
にもかかわらず、BBがタイトにすればBTNのエクイティは大きく低下する一方、BBがルースにしてもBTNのエクイティは大して上昇しません。
私たちBTNとしてはなんとも歯痒い結果ですが、どうやら、既にレンジvsレンジで有利を取っているBTNにとって、BBがルースにしたことでさらに有利にできるエクイティは限られているようです。
(有名な話ですが、[AKo]vs[73o]という「最強vs最弱対決」でも、[AKo]のエクイティは約65%であり、[73o]には約35%ものエクイティがあります。
標準的なBTNvsBBにおいて、BTNには既に54.20%のエクイティがあり、このエクイティをさらに高めるのは難しいようです。)
②「T」以上のハイボードにおける影響について
①の結果により、私たちBTNは喜ばしくないことに、「vsBB(Loose)」では期待よりもエクイティを高められないため、憎らしきルースなBBに対して、さほどマウントを取れそうにありません。
ですが、ボードストラクチャー別にみれば、いくらかマウントを取れるスポットもありそうです。
赤枠②は、「T」以上のハイボードに注目しています。
前回記事の「vsBB(Tight)」のとおり、「T」以上のハイボードにおけるBTNのエクイティは、上図の「②-①」のとおり低下しています。
これは、BB側に「まともなハンド」が増えたことから、「T」以上のハイカードにヒットする確率が高まっているためです。
反対に、「vsBB(Loose)」においては、「T」以上のハイボード(特に「A」ハイボード)におけるBTNのエクイティが上昇していることがわかります。
「vsBB(Tight)」とは逆のことを示唆しているだけですが、これは、BB側に「まともなハンド」の割合が減ったことから、元々有利だった「T」以上のハイボードがBTNにさらに有利になるためです。
また、図の結果より補足すれば、BBのコールレンジがルースなとき、BTNが全体的に有利になるというよりも、ボードのSUM値が高い場面or極端に低い場面で有利になることが多いようです。
ここまで、「vsBB(Loose)」にしたことによるエクイティの変化を分析しました。
次回は、このエクイティ分布を基に、BTNのCB戦略を分析してみます。